食品、飲料、医薬品、そして化学製品。私たちの生活を支えるこれらの製品を製造するプラントにおいて、最も神経を使うべき「血管」とも言える存在が、原料や製品を移送する「配管」です。
特に、口に入るものや高純度の化学物質を扱う現場では、配管の材質や施工品質が、最終製品の品質そのものに直結します。
「配管内部に少しでもサビ(錆)が発生すれば、製品への異物混入(コンタミ)事故につながる」 「溶接の不備で液漏れが起きれば、生産ラインが停止し、莫大な損害が発生する」 「洗浄性が悪い構造だと、菌が繁殖し、衛生管理上の重大なリスクとなる」
このような厳しい要求に応えるために選ばれるのが、優れた耐食性と衛生性を備えた「ステンレス鋼(SUS)」製の配管です。
しかし、ここで重要な事実をお伝えしなければなりません。「ステンレスだから安心」ではありません。ステンレス配管の性能を100%発揮できるかどうかは、その接続、つまり「溶接工事の品質」にすべてかかっているのです。
ステンレスの溶接は、一般的な鉄の溶接とは比較にならないほど高度な技術と知識を要します。施工不良は、後々のサビや漏れの原因となり、プラントの安定稼働を脅かす時限爆弾となりかねません。
この記事では、数多くのプラントでステンレス配管工事を手掛けてきたタテヌマテクノが、食品・化学プラントの担当者様に向けて、ステンレス配管の重要性と、失敗しないための溶接品質の見極め方、そして業者選びのポイントについて徹底解説します。
1. なぜ、食品・化学プラントでは「ステンレス配管」が絶対条件なのか?

まず、なぜこれらの業界で一般的な鉄(炭素鋼)ではなく、高価なステンレスが選ばれるのか、その根本的な理由を再確認しましょう。
1-1. 鉄(スチール)配管の致命的なリスク:「サビによるコンタミ」
一般的な鉄配管(SGPなど)は、安価で加工もしやすい反面、水や湿気に触れると容易に赤サビが発生します。 食品や医薬品の製造ラインにおいて、このサビが剥がれ落ちて製品に混入することは、絶対に避けなければならない品質事故(コンタミ)です。製品の回収騒ぎやブランドイメージの失墜に直結します。 また、化学プラントにおいては、配管が腐食することで薬品が漏洩し、重大な環境事故や労働災害を引き起こすリスクもあります。
1-2. ステンレスが持つ「3つの最強特性」
これらのリスクを回避するために採用されるのが、鉄にクロム(Cr)やニッケル(Ni)を添加した合金であるステンレス鋼(SUS304、SUS316Lなど)です。
- 優れた耐食性(サビにくさ): 表面に形成される非常に薄い「不動態皮膜」が、内部を腐食から守ります。特にSUS316Lなどは、塩分や酸に対する耐性が強化されています。
- 高い衛生性・洗浄性(クリーン度): 表面が平滑で汚れが付きにくく、バフ研磨などの表面処理を施すことでさらにクリーン度を高められます。CIP洗浄(定置洗浄)やSIP滅菌(蒸気滅菌)といった高温・高圧の洗浄プロセスにも耐えられます。
- 耐熱性・低温特性: 高温の蒸気ラインから極低温の冷媒ラインまで、幅広い温度領域で使用可能です。
まさにプラントの「血管」として理想的な素材ですが、その真価を発揮するためには、「正しく施工されること」が大前提となります。
2. 配管の寿命を決める!ステンレス溶接の「難しさ」と「品質基準」

ステンレスは「サビにくい」金属ですが、溶接の方法を間違えると、むしろ「サビやすい」金属に変わってしまいます。これがステンレス溶接の最も恐ろしい点であり、施工業者の技術力差が如実に現れる部分でもあります。
2-1. 一般的なアーク溶接とは異なる「TIG溶接」の世界
鉄骨などで使われる火花が飛び散る「被覆アーク溶接」や「半自動溶接」に対し、ステンレス配管の接合には主に「TIG(ティグ)溶接」が用いられます。 これは、タングステン電極と母材の間にアークを発生させ、その熱で母材と溶加棒(溶接棒)を溶かして接合する方法です。溶接部をアルゴンガスなどの不活性ガスでシールド(保護)することで、空気中の酸素を遮断し、酸化を防ぎながら高品質な溶接が可能になります。火花が出ず、非常に美しいビード(溶接痕)に仕上がるのが特徴ですが、高度な技能が求められます。
2-2. 品質リスク①:熱による「歪み」との戦い
ステンレスは鉄に比べて熱伝導率が悪く、熱が逃げにくいため、溶接箇所に熱が集中しやすくなります。さらに熱膨張率が大きいため、溶接時の熱で配管が大きく曲がったり、縮んだりする「歪み(ひずみ)」が発生しやすいという難点があります。 この歪みを予測し、適切な「逆歪み」をかけたり、拘束治具を用いたりして寸法精度を出すには、豊富な経験と勘が必要です。
2-3. 品質リスク②:サビの原因となる「酸化」と「鋭敏化」
TIG溶接ではシールドガスが不可欠ですが、風が強い屋外や、配管の裏側(内側)など、ガスの保護が不十分な状態で溶接を行うと、高温になった金属が空気中の酸素と反応し、黒く酸化して「酸化スケール(焼け)」が発生します。この焼けは不動態皮膜を破壊し、そこからサビが発生する原因となります。
また、溶接時の熱でステンレスの組織が変化し、耐食性が極端に低下する「鋭敏化(えいびんか)」という現象も起こります。適切な入熱管理とパス間温度の管理ができていないと、見た目は綺麗でも、内部からボロボロに腐食していく配管になってしまいます。
2-4. 食品・医薬グレードで求められる「裏波(うらなみ)溶接」
食品や医薬品の配管では、配管の内側に溶接の「こぶ」や「隙間」ができることは許されません。そこに液溜まりができ、菌が繁殖する温床となるからです。 そのため、配管の外側から溶接した際に、内側にも滑らかで均一なビード(溶接金属)が形成される「裏波溶接」が求められます。 これには、配管内部にアルゴンガスを充填する「バックシールド」を確実に行い、溶接電流や速度を繊細にコントロールする、まさに職人芸の領域の技術が必要です。
3. 業者選びで失敗しないために確認すべき「技術力」と「体制」

では、これらの難しい要求に応えられる業者をどう見極めればよいのでしょうか。「安さ」だけで選ぶと、後で痛い目を見ることになります。
3-1. 「鉄もできるが、ステンレスは苦手」な業者を避ける
「鍛冶屋さん」と呼ばれる業者の中には、鉄骨や一般的な鉄配管は得意でも、繊細なステンレス溶接は経験が浅いというケースが少なくありません。 ウェブサイトや会社案内で、明確に「ステンレス溶接」「TIG溶接」の実績をアピールしているか、食品・化学プラントでの施工例があるかを確認しましょう。「なんでもやります」という言葉を鵜呑みにするのは危険です。
3-2. 悪条件下での「現場溶接力」があるか
工場で配管を製作(プレハブ加工)して現場に持ち込むのは基本ですが、プラント現場では必ず、最終的な接続のための「現場溶接」が発生します。 狭い場所、高所、足場が悪い場所など、万全ではない環境下でも、工場と同じ品質の溶接(バックシールドや裏波溶接を含む)ができる技術力があるかが問われます。熟練の職人を自社で抱えているかどうかが大きなポイントになります。
3-3. 重量物据付との「連携体制」
新しいタンクやポンプを設置する際、機器の据付(重量物工事)と、その後の配管接続はセットで行われます。 別々の業者に発注すると、「機器の設置位置が微妙にずれていて配管が繋がらない」「配管業者が来るまで待機時間が発生する」といったトラブルが起きがちです。 機器の据付から配管接続まで一貫して対応できる業者であれば、連携ミスがなく、スムーズかつ高精度な施工が可能になります。
4. タテヌマテクノが食品・化学プラントに選ばれる理由

有限会社タテヌマテクノは、栃木県足利市を拠点に、関東全域の食品工場、化学プラント、医薬品工場など、高い品質基準が求められる現場で、ステンレス配管工事の実績を重ねてきました。
4-1. ステンレスの特性を知り尽くした「溶接のプロ集団」
当社はHPにも明記している通り、スチールだけでなく「ステンレスの加工、溶接を得意としています」。 TIG溶接の有資格者や熟練の職人が在籍しており、材質ごとの特性(SUS304とSUS316Lの違いなど)を熟知しています。熱歪みへの対策、適切なシールドガスの管理、入熱管理を徹底し、耐食性を損なわない高品質な溶接をご提供します。
4-2. サニタリー仕様の「裏波溶接」にも対応
食品・医薬グレードで求められる、サニタリー配管(内面が平滑な配管)の施工もお任せください。確実なバックシールドによる美しい裏波溶接を行い、菌の繁殖リスクを排除します。必要に応じて、溶接後の焼け取り(酸洗いや電解研磨)も行い、クリーンな状態で引き渡します。
4-3. 自社工場でのプレハブ加工と、柔軟な現場対応力
自社工場にて、精度の高い配管の切断、開先加工、プレハブ溶接を行います。これにより現場作業を最小限に抑え、工期を短縮します。 もちろん、現場での「現物合わせ」による最終調整や、既存配管との接続もお手の物です。狭所や高所であっても、妥協のない品質で施工します。
4-4. 機器据付+配管接続のワンストップ施工
タテヌマテクノの最大の強みは、重量物工事と配管工事を一貫して行える点です。 新しいタンクを搬入・据付し、その直後に同じチームが配管を接続する。このシームレスな連携により、他社には真似できないスピードと精度を実現します。お客様の管理工数削減にも大きく貢献します。
まとめ
食品・化学プラントにおいて、ステンレス配管は製品の品質と安全を守るための最重要設備です。その性能は、採用する材質だけでなく、「誰が、どのように溶接したか」によって決まります。
一見同じように見えるステンレス配管でも、施工品質の差は、数年後のサビ、漏れ、そしてコンタミリスクという形で確実に現れます。
だからこそ、業者選びには妥協しないでください。 タテヌマテクノは、ステンレス溶接の難しさを知り尽くし、厳しい要求に応える技術と経験を持っています。「安心して任せられる配管業者がいない」「機器の入れ替えと配管をまとめて頼みたい」という担当者様は、ぜひ一度私たちにご相談ください。
お電話またはメールフォームより、お気軽にご連絡ください。食品・化学プラントの実績も豊富です。

