日本の製造業を長年支えてきたプラントや工場。建設から30年、40年、あるいはそれ以上が経過し、設備の老朽化が深刻な課題となっている現場は少なくありません。
設備の入れ替えや生産ラインのレイアウト変更を任された担当者様が、最初に直面する巨大な壁。それは「正確な図面が存在しない」という現実です。
「建設当時の図面はどこかへ紛失してしまった」 「度重なる改造や増設で、手元にある図面と現場の状況が全く違っている」 「そもそも図面が残っていない配管や架台が無数にある」
このような状況下で、新しい大型機械を導入したり、複雑な配管を繋ぎ変えたりする工事を計画通りに進めることは至難の業です。多くの業者は「図面がないと見積もりできない」「このままでは施工できない」と難色を示すでしょう。
しかし、設備の更新を止めるわけにはいきません。図面が信頼できない現場で、いかにして安全かつ確実に、そして工期内に工事を完了させるか。
その答えは、机上の図面ではなく、目の前の現場に合わせて柔軟に対応する高度な職人技術、通称「現物合わせ(現合:げんごう)」にあります。
この記事では、老朽化したプラント工場の設備更新において「図面がない」ことが引き起こすリスクと、それを乗り越えるために不可欠な「現物合わせ」の技術について、数多くの難工事を手掛けてきたタテヌマテクノが深く掘り下げて解説します。
1. なぜ古い工場の工事は「図面通り」にいかないのか?

そもそも、なぜ古い工場では「図面と現場が一致しない」という事態がこれほどまでに頻発するのでしょうか。その背景には、長年にわたる工場の歴史と、プラント設備特有の事情があります。
1-1. 度重なる「つぎはぎ改造」の歴史
建設当初は最新鋭だった工場も、時代の変化や生産品目の変更に合わせて、様々な改造が加えられてきました。 「生産量を増やすために配管を太くした」「新しい機器を追加するために、既存の配管ルートを迂回させた」「安全対策で手すりや足場を追加した」 こうした改造工事のたびに、完璧に図面が更新されていれば問題ありません。しかし、実際には現場の判断で急遽行われた小規模な工事や、図面管理がずさんだった時期の記録は残っていないことが大半です。その結果、現在の現場は、誰も全体像を把握できていない「つぎはぎだらけの迷宮」のようになっているのです。
1-2. 経年劣化による「歪み」や「沈下」
プラント設備は、熱、振動、重量といった過酷な負荷に常にさらされています。数十年という長い時間が経過する中で、設備自体が物理的に変形していることも珍しくありません。 熱膨張と収縮を繰り返したことによる配管の歪み、重量機器を支え続けたことによる床コンクリートや基礎の不同沈下。これらは数ミリ〜数センチ単位のズレを生み出します。建設当時の図面が残っていたとしても、その寸法が現在の現場でも正しいとは限らないのです。
1-3. 図面管理システムの変遷と紛失
昔の図面はすべて紙で管理されていました。保管場所の移動や担当者の退職に伴い、紛失してしまうケースは後を絶ちません。また、青焼き図面が劣化して判読不能になっていることもあります。CADデータ化が進んだ現代とは、図面管理の環境が根本的に異なっていたのです。
2. 図面頼りの業者では突破できない「3つの現場の壁」

「図面通りに施工します」というスタンスの一般的な工事業者では、老朽化した工場の現場に対応できません。いざ工事が始まった段階で、以下のようなトラブルに直面し、作業がストップしてしまうからです。
2-1. 壁①:想定外の「干渉(ぶつかり)」発生
新しい機器を搬入しようとしたら、図面に載っていない配管やケーブルラックが経路上に張り出していて、クレーンで吊った荷物がぶつかってしまう。あるいは、新しい配管を通そうとしたルートに、撤去漏れの古いサポート架台が残っていた。 こうした「干渉」は、最も頻繁に起こるトラブルです。干渉物を避けるためには、その場でルートを変更したり、障害物を撤去・移設したりする柔軟な対応が必要になります。
2-2. 壁②:接続部の「寸法不整合」
新しいポンプと既存の配管をフランジで接続しようとしたところ、ボルト穴の位置が数ミリずれていてボルトが入らない。配管の長さが微妙に足りない、あるいは長すぎる。 図面を信じて工場でプレハブ加工(事前製作)してきた配管が、現場で使い物にならないというケースです。特に、経年劣化で歪んだ既存配管との接続は、新品同士の接続のようにスムーズにはいきません。
2-3. 壁③:基礎・架台の「レベル(水平)不良」
新しい機械を設置するためのコンクリート基礎や鉄骨架台。図面では水平になっているはずが、実際には長年の使用で傾いていたり、デコボコになっていたりすることがあります。 そのまま機械を設置すれば、振動の原因となり、設備の寿命を縮めてしまいます。現場の状況に合わせてライナー(調整板)を入れたり、架台そのものを加工修正したりする高度な調整作業が不可欠です。
3. 解決策は「現物合わせ(現合)」の高度な施工技術にあり

図面が信用できない、あるいは図面そのものがない現場で工事を成功させる唯一の方法。それが「現物合わせ(現合:げんごう)」です。
現合とは、その名の通り「現場の現物に寸法を合わせて、その場で製作・施工する」手法のことです。これは、単なる行き当たりばったりの作業ではなく、熟練の職人による高度な技術の結晶です。
3-1. 現合の肝は「正確な測定」と「立体的な想像力」にあり
現合施工の第一歩は、現場の状況を正確に把握することです。図面がない中で、既存の配管のルート、障害物の位置、接続口の角度や寸法を、メジャーや水平器、時にはレーザー測定器などを駆使してミリ単位で測定します。
そして重要なのが、職人の頭の中にある「立体的な想像力」です。「ここを避けるためには、配管を45度曲げて、さらに少し立ち上げる必要がある」といった複雑なルートを、現場の空間を見ながら瞬時にイメージし、それを簡単なスケッチ(アイソメ図など)に落とし込む。この能力がなければ、複雑なプラントの現合配管は不可能です。
3-2. 現場を「加工場」に変える、移動式の技術力
測定した寸法に基づき、その場で部材を加工します。
- 切断: パイプやアングル材を必要な長さに高速カッターやガス切断機で切り出す。
- 開先加工: 溶接の品質を高めるため、切断面をグラインダーで斜めに削って「開先(かいさき)」を作る。
- 仮組み・調整: 切り出した部材を現場で仮組みし、実際に合うかどうかを確認。微調整を繰り返す。
トラックに積んできた機材と、現場の一角に設けた仮設スペースだけで、工場での製作と同等の加工を行う。これがプロの鍛冶工・配管工の仕事です。
3-3. 材質を問わない「現場溶接」のスペシャリスト
仮組みで寸法が合えば、いよいよ溶接です。プラント配管では、水や空気を通す一般的な「炭素鋼(SGPなど)」だけでなく、薬品や食品原料を通す「ステンレス鋼(SUS)」も多用されます。
特にステンレスの現場溶接(TIG溶接)は難易度が高く、風の影響や足場の悪さといった悪条件の中で、欠陥のない高品質な溶接を行うには、非常に高い熟練技能が求められます。「鉄は繋げるが、ステンレスの現合はできない」という業者も多い中、材質を問わず対応できる溶接技術は、老朽化工場の改修において最強の武器となります。
4. タテヌマテクノが老朽化工場の更新工事に強い理由

有限会社タテヌマテクノは、図面のない古いプラントや、複雑に入り組んだ工場の設備更新工事において、数多くの実績を重ねてきました。私たちが、他社が敬遠するような難工事を成功させられる理由をご紹介します。
4-1. 徹底した「事前現場調査」でリスクを洗い出す
図面がない現場では、事前の調査がすべてを決めます。私たちは見積もりの段階から経験豊富な担当者が現地に入り、徹底的な現場確認を行います。 既存設備の状況、搬入ルートの障害物、配管の接続状態などを目視と測定で確認し、「どこにリスクが潜んでいるか」「現合が必要な箇所はどこか」を洗い出します。この泥臭い作業を厭わない姿勢が、工事当日のトラブルを未然に防ぎます。
4-2. 「運ぶ・据える」と「作る・繋ぐ」のワンストップ体制
タテヌマテクノは、重量物の搬入・据付のプロフェッショナルであると同時に、製缶・溶接・配管加工の専門家集団でもあります。
老朽化した工場では、「古い機械を撤去してみたら、基礎がボロボロだった」「新しい機械を置いたら、既存配管と繋がらなかった」という事態が頻発します。 私たちは、これらの問題に対して、別の業者を呼ぶことなく自社チーム内で即座に対応できます。 「基礎をその場で補修する」「繋ぎの配管を現合で製作する」といった連携がスムーズに行えるため、工期を遅らせることなく工事を進められます。
4-3. どんな現場でも対応する「柔軟な職人魂」
私たちの職人は、「図面通りではない」ことを前提に現場に向かいます。 「合わなければ合わせる」「なければ作る」という柔軟な思考と、それを実現する確かな腕を持っています。狭い場所、高所、火気使用制限のあるエリアなど、どんな厳しい条件下でも、知恵と技術で最適な施工方法を見つけ出します。
まとめ
「図面がないから工事ができない」と諦める必要はありません。老朽化した工場の設備更新は、図面ではなく、現場の事実に合わせて進める「現物合わせ」の技術があれば必ず成功します。
重要なのは、きれいな図面を描く会社ではなく、汚れた現場で汗をかき、鉄と向き合い、その場で最適解を形にできる「現場力のある業者」をパートナーに選ぶことです。
タテヌマテクノは、栃木県足利市を拠点に、関東・全国のプラント工場で、図面のない難工事に挑み続けています。「うちの工場は古くて複雑だから…」とお悩みの担当者様、ぜひ一度私たちにご相談ください。現地調査から、安心・安全な施工プランをご提案いたします。
お電話またはメールフォームより、お気軽にご連絡ください。図面のない現場でも大歓迎です。

