建設業界の人手不足、止まらないのはなぜ?2030年に起こる“未来の現場”と今からできる対策

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建設現場で「人が来ない」「若手が続かない」という声を聞くことは、もはや珍しくありません。求人を出しても応募がない。面接には来ても、すぐに辞めてしまう。こうした状況は、一部の企業や地域だけの話ではなく、業界全体に広がっています。実際、建設業における技能者の平均年齢はすでに50歳を超えており、10年後には引退ラッシュが現実のものとなります。


一方で、現場の仕事は減っていません。老朽化したインフラの修繕、災害対策、都市再開発など、社会からの期待はむしろ増しています。人手が足りないのに、やるべき仕事は増え続ける――。この矛盾が、じわじわと業界を締めつけているのです。


それでも今は、まだ「回っている」ように見えるかもしれません。ですが、今いるベテランが引退したとき、本当に現場は回るのでしょうか。もし、次の担い手がいなければ、工期は延び、品質も保てず、社会全体に大きな影響を及ぼすことになります。


この問題は、建設会社だけでなく、発注者や地域社会すべてに関わるものです。だからこそ、「人手不足の未来」は、いまこの瞬間に考えるべきテーマなのです。




今、建設現場で起きている“人が足りない”という異常事態

建設業界の人手不足は、感覚的な話ではありません。たとえば厚生労働省のデータによると、建設業の有効求人倍率は常に5倍前後と、他業種と比べても突出して高い水準にあります。つまり、ひとつの求人に対して、働き手が1人もいない状態が普通に起きているということです。さらに、総務省の調査では建設業従事者の3人に1人が60歳以上という結果も出ています。若手の数が圧倒的に少なく、高齢層に業務が集中しているのが実情です。


加えて、若者の建設業離れが加速しています。かつては「手に職をつけたい」「身体を動かす仕事がしたい」と入職していた20代の層も、今はオフィスワークやIT業界へと流れていきます。学校や親の勧めもあり、現場仕事は“選ばれにくい職業”になってしまっているのです。


このような状況が続けば、当然ながら「工事が始められない」「現場が回らない」といったトラブルが増えていきます。すでに地方の一部では、業者が確保できずに公共工事の入札不成立が相次いでいます。人がいないだけで、社会インフラが止まってしまう。この現実が、今まさに現場で起きています。




なぜ若手が建設業界を避けるのか?5つの構造的理由

若い世代が建設業界に入ってこないのは、「きつい・汚い・危険」という旧来のイメージだけが理由ではありません。実際には、構造的な問題がいくつも重なっており、それが若手の流入を阻んでいるのです。


まず一つ目は、労働環境の厳しさです。早朝から長時間の作業、夏場の炎天下、冬場の冷え込み。もちろん、すべての現場が過酷というわけではありませんが、若者が「やってみたい」と感じる仕事環境とは言いがたいのが現状です。


二つ目に、収入体系の不透明さがあります。月収は現場によってばらつきがあり、昇給や賞与の基準が見えにくい職場も少なくありません。安定を求める若者にとって、この“先が読めない感覚”は大きな不安材料となります。


三つ目は、スキルアップの道筋が不明確なこと。キャリアステップや資格取得の支援体制が整っていない企業も多く、「何年働いても成長実感がない」と感じてしまえば、離職にもつながります。


四つ目は、IT化の遅れです。若い世代はスマートフォンやデジタル管理が当たり前の環境で育っていますが、現場では紙の図面、手書きの書類がいまだ主流。こうしたギャップは小さく見えて、実はかなりのストレスになります。


最後に、社会的イメージの改善が進んでいないという点。テレビやネットでは、建設業のやりがいや先端技術への取り組みなどが語られることは少なく、古い偏見だけが残ってしまっているのです。




2030年の建設業界、現場はどうなっているのか?

今から5年後、10年後の建設現場は、これまでの延長線上では語れません。国土交通省の調査では、2030年には建設技能者の約35%が引退年齢に達するとされています。一方で、国内のインフラはますます老朽化が進み、修繕や更新のニーズは増加するばかり。人が減るのに、やるべき仕事は確実に増える――このねじれた構図が、建設業界に深刻な変化をもたらそうとしています。


まず予想されるのが、工期の長期化とコスト上昇です。施工を担う人材が確保できなければ、仕事を受けられず、結果として工事の納期が延び、価格も上がる。自治体や施主にとっては、信頼できる施工業者がますます貴重な存在になります。


また、業界の二極化も進むでしょう。若手育成に投資し、デジタル化や業務効率化を進めた企業には人が集まり、そうでない企業は淘汰されていきます。特に、重層下請け構造に頼る旧来型の体制は、持続が難しくなっていくと予測されます。


そして、今後は外国人材や女性技能者の活躍もさらに重要になります。多様な人材が当たり前に働く時代に向けて、受け入れ側の体制も見直しが迫られるでしょう。2030年の建設現場は、今以上に“柔軟な変化”を求められる場所になっていくのです。




今、企業や自治体が始めている“人を呼び戻す”取り組みとは?

この人手不足の未来を見据え、すでに動き出している企業や自治体も少なくありません。たとえば、大手ゼネコンの中には、建設ロボットやAIを使った施工管理の導入を進めている会社があります。人が減っても一定の生産性を確保するための“仕組みづくり”が始まっているのです。


一方、地方の中小建設業者では、若手職人の育成に特化した研修制度やOJT体制の強化を行う動きが増えています。単に技術を教えるだけでなく、「ここで働き続けたい」と思える職場づくりに力を入れることで、定着率を上げようとしているのです。


また、外国人技能実習制度を活用する企業も増えています。ただし単なる人手確保ではなく、言語や文化のサポート体制を整えた“共に働く仕組み”として運用する姿勢が問われています。


自治体でも、地元高校との連携による建設業インターンシップ、女性向けの職業体験イベントなど、多様な角度から“きっかけ”づくりが行われています。業界の魅力を伝える場を増やすことが、次世代の担い手を呼び戻す鍵となっているのです。


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現場が変わるには、“誰か”じゃなく“あなた”が動くしかない

人手不足の未来を変えるには、行政や業界全体の取り組みももちろん必要です。しかし、実際に現場を変えていくのは、今そこにいる一人ひとりの意識と行動です。「どうせ変わらない」と諦めるのではなく、「自分の会社は変えられる」「自分の周囲からできることがある」と思えるかどうかが分かれ目です。


たとえば、日々の現場で声をかけ合うこと。新人の不安に耳を傾けること。面倒だと思っていた記録業務をスマホに変えること。それだけでも、次に来る人にとっては「働きやすい場所」になります。


また、仕事の魅力ややりがいを外に発信していくことも大切です。自分たちが当たり前にやっていることこそ、外の人には新鮮で、価値ある情報になります。発信は特別なことではなく、日々の仕事の中にあるのです。


未来の建設業界が明るいかどうかは、私たちがどう行動するかにかかっています。変化を待つのではなく、変化をつくる側に回りましょう。


小さなことでも構いません。「話してみたい」「相談してみたい」と思った方はこちらへ

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